ツールと手法

 中小規模施設のスマート施設園芸実現のために、UECSプラットホームを利用する低コストハードウェアとそれを活用するソフトウェアに関しまして、各種の手法・ツールの開発・提案を行います。ここでは、これらを紹介するとともに、本技術の社会実装を推進するため、設計図やソフトウェアのダウンロードも可能になっています。プロジェクトに興味をお持ちの皆様は、これらのツールを自由にご試用いただけます。ただし、無保証ですので、あくまでも自己責任でご使用願います

・ハードウェア (1)RaspberryPiによる低コストUECS機器の製作と利用

 RaspberryPi基板ベースの計測制御ハードウェアを各種開発しました。ソフトウェアは当機関が保有する汎用UECSソフトウェア(UECS-Pi)を用いました。開発したハードウェアは2016年11月末時点で大きな不具合なく動作しています。一般農家向けDIY製作セミナーにて講師を担当し、安価な汎用部品やセンサを使用して、一般利用者がハードウェアを自作可能なことを実証しました。

 RaspberryPiというのは、イギリス製の教育用コンピュータ基板です。5000円程度でパソコン並みの性能を持つコンピュータを手に入れられます。これをUECSのプラットホームに対応させるためのソフトウェア(UECS-Pi)が本プロジェクトコンソーシアムメンバーの株式会社ワビットにより開発されています。誠文堂新光社の「農耕と園藝」の2016年10月号から2017年10月号に、12回にわたってこのコンピュータ基板を中心にしたUECSの連載記事が掲載されました。

 RaspberryPiの日本での基板購入は、 RSコンポーネンツや、スイッチサイエンスなどから通販で購入できます。UECSのシステムとしてキットや部品を入手するならば、株式会社ワビットのスマートアグリプロジェクトのページを参照すると詳述されています。

リンク・ダウンロード

  • UECS-Pi Basic(RaspberryPi用のUECS計測制御ソフトウェア)
  • Team UECS-Pi有志のメンバーで制作、編集しているスマートアグリやUECS-Pi関連の情報を集めたWikiサイトです。
  • 教育用汎用基板Raspberry Piによる自律分散環境計測制御システム用オープンプラットホーム(UECS-Pi)の構築」、農業情報研究Vol. 25 (2016) No. 1 p. 1-11
  • ・ハードウェア (2)Arduinoによる低コストUECS機器の製作と利用

     Arduinoに搭載できるUECSノード用計測ハードウェア(シールド)基板を完成しました。また、この基板と電子部品をセットにした低コストUECS計測ノード自作キットを設計しました。また、Arduinoに搭載するUECSノード用制御ハードウェアについて、耐ノイズ性を高めたシールド基板を設計・試作しました。

     Arduinoは、イタリア製のオープンソースハードウェアのコンピュータ基板です。コンピュータ基板単体の機能はRaspberryPiよりも少ないのですが、シールドという拡張機能基板を何枚も重ねることができます。まるで合体メカのように、様々な機能を追加することができます。Wikipediaでわかりやすく解説されています。プログラミングは、スケッチと呼ばれるC言語風のシンプルなもので行いますので、少しの学習で、作成できるようになります。また、昔のマイコンキットのようなフィーリングで、使用部品が比較的少なく、回路も単純なので、施設のような厳しい環境でも長期間安定して動作できるようです。本プロジェクトでは、UECS対応の環境計測器の機能を追加するUECS計測シールドとそのキットと、カーテンなどの制御器の機能を追加するUECS制御シールドとそのキットを開発しました。また、UECSに対応した計測制御器を開発するためのUARDECS(ユアルデックス)というArduino用のライブラリを開発し、無償配布しています。また、開発したArduino用UECS計測シールドとUECS制御シールドの完成品、キット販売、講習会の実施などを担当していただける企業様を探しております。

    リンク・ダウンロード

  • Arduino用UECSノード開発用ミドルウェア(UARDECS)
  • UECS計測シールド基板図面一式(991kB)
  • UECS計測シールドキットの組み立て説明書(1,352 kB)
  • UECS計測シールドキット用のUECS計測ノードのスケッチ(プログラム)(8kB)
  • UECS制御シールド基板図面一式(1270kB)
  • UECS制御シールドキットの組み立て説明書(2,030 kB)
  • UECS制御シールドキット用の各種制御ノードのスケッチ(プログラム)(36kB) (基板動作テスト、UECS暖房CO2施用制御シールド用スケッチ、UECS天窓制御シールド用スケッチ、UECS二層カーテン制御シールド用スケッチ、UECS日射追従培養液給液制御シールド用スケッチ)
  • 農業情報学会年次大会講演要旨「日本型中小規模多棟分散園芸施設へのUECS プラットホームの活用」2016年5月19日、東京大学弥生講堂(PDF、394kB)
  • 先行プロジェクトで研究開発したArduinoを使った製作ページ
  • ・ハードウェア (3)複合環境制御装置Yoshimaxを使ったリニューアル

     環境制御コントローラYoshiMaxの改修を行うための仕様を検討しました。従来のYoshiMaxでは搭載されていなかった窓換気やカーテンをUECS対応となるようにしました。ヒートポンプ制御に関して制御方法の検討をおこないました。

     1990年代の温室の環境制御システムは、マイコンを内蔵した1台で集中管理する複合環境制御コントローラが主流でした。当時は10社以上がばらばらの規格で製造・販売していたため、多くの会社が事業撤退してしまった現在、老朽化したコントローラをどうするかという課題があります。このようなシステム構成のコントローラを使い慣れた生産者は、自律分散システムへの移行に抵抗があることも事実です。コンソーシアムメンバーであり、複合環境制御コントローラの老舗メーカーの三基計装株式会社では、2010年に製品をUECS対応にして、データ収集・UECS機器との連携操作を可能にする技術を発表しました。岡山大学では、イチゴ施設養液栽培の権威である吉田裕一教授の環境制御ノウハウを搭載したYoshimax(ヨシマックス)を開発しました。これを搭載したUECS対応の複合環境制御コントローラを三基計装で開発・製品化しました。さらに機能拡張し、各種作物の冷房等の制御にまで使用することをプロジェクトで推進しています。

    リンク・ダウンロード

  • 三基計装株式会社アグリシステム
  • Yoshimaxを開発した岡山大学野菜園芸学研究室
  • ・ハードウェア (4)多棟分散施設を繋ぐ無課金無線ネットワーク

     多棟点在施設を無課金のネットワークで接続し、低コストで統合的に管理できるシステムの構築を目的にして、いくつかのネットワーク機器の実証テストを行いました。2.4GHz帯(九州大学現有、TWE-LITE(モノワイヤレス製)を使用)および920MHz帯(ニシム電子工業製(評価版貸出)、カタログによる送信距離見通し5km)の計測装置を用いて電波強度の評価試験を行いました。2.4GHz帯による試験では、計測装置をハウス内の2箇所に設置して両装置から送信される電波の受信強度を計測しました。その結果、計測装置の位置を固定しているにもかかわらず、電波強度が絶えず変動し受信機から離れている装置の電波強度の変動が大きくなることがわかりました。一方、920MHzの計測装置(受信機と計測装置の距離は200m程度)では、3ヶ月間の計測期間中に複数回の通信不良が発生したものの、電波強度もほぼ一定値で推移しており、安定した通信が行えることを確認しました。また、チトセ工業製の920MHz帯のセンサネットワークシステムの性能評価を実施しました。その結果、中継器を用いることで、最大1.6km離れた地点の温室の環境データを通信可能なことが確かめられました。2.4Ghz帯ネットワーク評価機器として、スマートロジック社製無線センサ製品(10mW出力)をベースに、強制通風式で気温・湿度・CO2濃度計測が可能な子機、および土壌水分・土壌温度計測が可能な子機を開発しました。920MHz帯ネットワーク評価機器として、チトセ工業製無線センサ製品(20mW出力)をベースに、強制通風式、および簡易自然通風式でそれぞれ気温・湿度・CO2濃度計測が可能な子機を開発しました。それぞれの無線センサのデータをUECS規格の通信に変換するゲートウェイプログラムの開発も同時に行った。さらに、山口県農林総合技術センター内の実証地において、200m離れた遠隔ハウス間で開発した製品の性能試験を行った。

     各種の評価試験を実施した結果、サブギガ(920MHz)帯のネットワークの利用が有望です。ただし、データ伝送速度や通信頻度を大きくできない点について検討の余地があります。

    リンク・ダウンロード

  • スマートロジック株式会社の農業用ワイヤレスネットワーク
  • チトセ工業株式会社のサブギガネットワークLogbee
  • インタープラン株式会社の920MHz無線モジュールを含む無線ネットワークのソリューションページ
  • 近畿大学で開発したチトセ工業LogbeeのUECSゲートウェイ(javaプログラム)(894kB)
  • 農業情報学会2017年度年次大会・オーガナイズドセッション「UECSプラットホームで日本型施設園芸が活きるスマート農業の実現」(東京大学弥生講堂・2017年5月19日 9:00-12:00)の研究発表講演要旨(PDF)「中小規模多棟分散施設の無線情報ネットワークシステムの検証」。
  • ・ソフトウェア (1)UECSの製作やテストに使用するツール

     UECSの機器を試作したときに、UECSの通信文(UECS-CCM)が正しく送受信できているか確かめることは重要です。一般のネットワークアナライザ等を使用することも可能ですが、UECS-CCMのパケットに特化したUECS送受信機(Windows版のUECSパケットアナライザ)を使用するのが大変便利です。また、疑似的な環境計測データをUECS-CCMで配信するUECSダミーノードは、計測モニタソフトウェアや制御機器のテストに重宝いたします。Androidスマートフォン等で現在の環境データを表示する試作アプリもあります。これは、GooglePlay経由でインストールできませんので、説明書を参照の上、自己責任でご使用ください。

    リンク・ダウンロード

  • UECS送受信機(Windows版のUECSパケットアナライザ)のダウンロードページ
  • Windows版のUECSダミーノード(ZIP、2378kB)
  • Android版UECSAndroidMonitor(温度計表示アプリ、ソースコード付き)(ZIP、2.26MB)


  • ・ソフトウェア (2)UECSによるスマート施設園芸のためのツールやクラウドサービス

     WindowsPCで動作するUECS対応モニタソフトウェアのプロトタイプを開発しました。ローソク足と移動平均線を使用した環境トレンドの把握機能、病害発生等の合致環境条件の検索機能、各環境積算値の達成日付の予測機能など、研究実施責任者が長年の経験の中で得た各種解析手法を具現化しました。UECSに対応した環境計測装置であれば、本モニタソフトウェアを使用することが可能で、ハードウェアをDIYすることで、生産者が容易にスマート施設園芸を実践できるようになり、中小施設の高度環境計測制御が急速に普及すると考えます。

     施設の環境モニタリングシステムが多種市販されるようになり、導入が進んでいます。しかし、生産者が自分の施設の環境を閲覧しスマート施設園芸を行う要のモニタソフトウェアは、販売機器(ハードウェア)専用になっている場合が多いです。ハードウェアとソフトウェアの開発・製品販売を独立できれば、ソフトウェア専門企業によるスマート施設園芸実践のための高性能アプリケーションソフトウェアの開発が期待できると考えます。これまで、WindowsPC用にUECSモニタがUECSで標準的なデータ収集・記録ソフトウェアとして利用されてきました。非常に多機能なので、研究用に多数のデータを扱うためには大変有用です。しかし、生産者が現場で、ちょっとした解析を行うスマート施設園芸の実践ツールとしては、使用方法が難しいところがありました。そこで、本プロジェクトで開発したのがUECS-GEAR(ウエックス・ギア)と呼ばれるソフトウェアです。下記から無償でダウンロード可能ですので、ぜひ、ご試用ください。このほかにも、UECSに対応するAndroidのアプリやクラウドサービスのリンクをしています。

    リンク・ダウンロード

  • Windows用UECS環境解析ツールUECS-GEAR(ver.1.0.0.0)(ZIP、3.28MB)、マニュアルはここから参照(PDF、1.22MB)できます。
  • 日本生物環境工学会2017年松山大会講演要旨「UECS プラットホームを用いた低コスト園芸施設環境モニタリングシステム」、2017年9月1日、愛媛大学農学部
  • Windows用UECSモニタ(UECS-CCMのデータ記録ツール)岡山大学安場氏製作(ZIP、7293kB)
  • Andoroid用モニタツールUECS Station for Android(株式会社ワビット製作)
  • 株式会社ワビットの環境制御Web監視クラウドサービス
  • 富士通株式会社の食・農クラウドAkisai


  • ・ソフトウェア (3)UECSで簡単に複雑な制御方法を実現するためのツール

     UECS用制御ロジック開発ツール開発しました。このツールはWindows PC上で動作し、マウスによるドラッグ&ドロップにより、フロー間を結線することでデータの流れを編集できます。受信したCCMにユーザーが記述したスクリプトによる演算を行い、別のCCMとして送信することで複雑な統合環境制御を実現できます。複数回の改良を行った後、最終版の提供を受けて温室内のUECSネットワークに接続したPC上で動作させ、意図通りに制御が可能であることを確認できました。

    リンク・ダウンロード

  • UECS用制御ロジック開発ツール活用マニュアル(農研機構のダウンロードページへのリンク)。UECS用制御ロジック開発ツールVer.2.3(ZIP、3,575kB)。※ご使用に関する許諾条件があります。必ずご一読ください。本ソフトウェアをご使用された場合は、本条件に同意されたものとみなします。UECS用制御ロジック開発ツールのサンプルプログラム(ZIP、18kB)。
  • 農業情報学会2017年度年次大会・オーガナイズドセッション「UECSプラットホームで日本型施設園芸が活きるスマート農業の実現」(東京大学弥生講堂・2017年5月19日 9:00-12:00)の研究発表講演要旨(PDF)「UECS 用制御ロジック開発ツールの実証試験」。